近代 想像された社会の系譜
近代 想像された社会の系譜
Modern Social Imaginaries
近代とはいかなる時代なのか.その核心には,社会の道徳秩序に対する新しい思考がある.初めは何人かの大思想家の頭に浮かんだ観念にすぎなかったこの考えは,〈社会的想像〉として,どのように社会全体にまで浸透していったのか.その系譜を辿り,多様なる近代をかたちづくるものの本質を解明する.
「訳者あとがき」より
本書の「謝辞」で,「本書の内容は私がいま準備している著作,『世俗の時代に生きる』(Living in a Secular Age)の中心をなす部分を敷衍したものだ」と記されているように,近代の〈世俗性〉をめぐる問いが本書の核心にあるのは間違いない.なお,ここで準備中と記されている著作はその後,『自我の源泉』に比肩する浩瀚な著作『世俗の時代』(A Secular Age,2007)として刊行された.西洋世界における宗教生活の変遷を壮大な叙事詩のように描き出す『世俗の時代』は,この〈世俗性〉をめぐる問いに正面から取り組んだ畢生の大著だといってよい.とはいえ先に触れた「謝辞」の言葉通り,『世俗の時代』の中核部分については,本書にほぼ集約されている.もちろん壮大な精神史の個々の局面にかんする立ち入った議論については,『世俗の時代』を繙くほかないだろうが,しかしテイラーの議論の核心を掴むには,むしろ本書の簡便な叙述のほうが役に立つ.その意味では本書を『世俗の時代』の梗概として読むこともできるだろう. https://gyazo.com/939e7e5de5ebd034670d7f6d27a074e8